プレスリリース
メディア 2007/03/09
日食IT版連載 成長へのモデルチェンジ
「食の安全を担保する情報管理」
小ロット生産にどう挑む?
“モノの流れ”の把握が第一歩
在庫管理なくして食の安全なし
前回見たように、食の安全と生産性向上を同時に追求する手法として、小ロット生産体制の構築があげられる。しかし、段取り替えの増加や欠品への不安もあり、同生産体制への移行は容易ではない。取組みの第一歩として求められるのが、工場内でモノがどう流れているのかを把握することだ。そのうえで、この流れをコンパクトにする仕組みを構築することが必要となる。原材料や半製品、製品の在庫を確実につかめなければ、本当の意味での食の安全に近づくことはできないのだ。
1.小ロット生産の効果
従来の大量ロット型見込み生産は、原料や製品の在庫を抱え込む危険性と常に背中合わせにある。設備稼働率の向上と原料コストの削減を果たす有効な生産体制ではあるが、それに見合った需要がなければ、たちまち企業経営を悪化させる。
問題はそれに留まらない。供給過剰で不要となった原料の廃棄をいつまでもためらえば、食の安全を冒す生産に手を染めてしまいかねないのだ。
食品業界では近年、これまで月次であった生産計画を週次に短縮化するメーカーが相次いでいる。より詳細な生産スケジュールに至っては、通常1日単位のものを2時間単位にまで精緻化しているメーカーもある。いずれも販売動向に合わせてフレキシブルに生産調整を実施し、小ロット化により余分な原料調達や製造を行わないという体制を構築する狙いがある。
市場動向に沿った効率的な生産体制を志向する小ロット化だが、食の安全という側面でも効果を発揮しつつある。製造するものを切り替える際の段取り替えが増えたことで、設備・機械の点検や清掃を頻繁に行えるようになったのだ。こまめな原料調達の結果、鮮度の高い原料を生産に回せるようになってきている。
2.小ロット化への移行方法
小ロット生産体制への移行は、段取り替えの増加や欠品への不安を呼び起こすこともあり、現場の理解を得るのが容易ではない。具体的にどの程度のロットにまとめるかも、製品の特性や設備・機械の性能、取引先との関係により、各社・各工場により事情が異なってくる。まさにノウハウともいえるものなのだ。
段取り替えの増加は、部分的に見れば効率を悪化させる。そこで必要になってくるのが、工場内のモノの流れを改善することだ。いわゆる工場内物流の改善である。トヨタ自動車の生産性の高さは、まさに工場内物流の継続的な改善に因っている。小ロット生産体制を実行するには、ここにメスを入れなければならない。
改善の第一歩は、工場内でモノがどのように流れているのかを確実につかむことである。原料や半製品、製品の正確な在庫数量を、常に把握できる体制が必要だ。そのうえで、小ロット化に向けロットの縮小を図り、必要な量だけ流していくというプロセスを繰り返すのである。
3.命運にぎる在庫管理
製造現場を巻き込んだ情報管理ができてこそ、本当の意味での食の安全が担保される。本連載の前半で述べた「全社的な品質情報の一元化」は、その第一歩に過ぎない。一元化した情報を踏まえ、正確な在庫管理や生産管理、品質管理を行うことで、真の目的は達成される。
在庫がわからなくても製造はできる。しかし、在庫を正確につかめなければ、会社を存続できない時代に突入しているのも事実だ。在庫管理の巧拙は、生産性の問題のみならず、食の安全を担保できるかにも直接影響している。
(取材協力:ブロード・システム・ソリューションズ)