プレスリリース
メディア 2006/12/08
日食IT版連載 成長へのモデルチェンジ
「食の安全を担保する情報管理」
製造現場を含めた管理の仕組み
原料識別コードの一元化が鍵
新コードへの早急な移行は禁物
アレルギー表示や原産地表示など食品表示を巡る規制強化により、原材料情報を記録した帳票を再点検する動きが活発だ。情報を迅速に把握するため、帳票をデータベース(DB)化する企業も増えている。しかし、これはあくまで書類上の話。帳票通りの原材料が、製造現場で使われているかは別だ。近年、この点も含めた情報管理の仕組みに着手する食品メーカーが現れ始めた。鍵を握るのが、原料を識別するコードを全社で一元化できるかだ。製品の安全性担保に留まらず、業務効率を改善できるかにも影響する。しかし、実際の運用では注意すべきことがある。新しいコードへ一気に移行しないことだ。最初から百点満点を目指すと無理が出る。
1.品質規格書を巡る問題
製品の重量やサイズ、原材料、栄養成分など様々な規格情報を管理する品質規格書。汎用的な表計算ソフトを使い、得意先側でフォーマットを作っている場合が多い。仕入先とは電子メールでファイルをやり取りし、内容の合意が取れた段階で仕入先が印刷・押印し、原本として郵送する。得意先では、年1回の頻度で内容の更新を求めることが多い。
規格書の作成では、仕入先と得意先の双方で大きな負担を背負っている。
仕入先では得意先の数だけ異なるフォーマットが存在。同じ情報でも各社ごとに入力する必要がある。得意先のフォーマットに合わせ自社システムを構築しても、フォーマットが変われば費用を掛けてシステム変更せざるを得ない。規格書を作成する部署に自然と情報が集まってくるわけでもない。工場の担当者に問い合わせなければならないこともあり、手間と時間がかかるのだ。
得意先にも負担がある。改ざんを憂慮し紙での管理を基本としているため、更新情報を自社の品質規格書に再入力しなければならない。転記ミスの可能性を秘めている。原料の配合が企業秘密とされ、正確な情報を入手できない場合もある。仕入先によっては記入漏れやミスなどがひどいこともあり、チェックや再提出にかなりの時間がかかる。情報が確定しないまま表示作成を進めなければならない場合もあるのだ。
近年、アレルギー表示義務化やPL制移行といった安全面の規制強化で、規格書の内容を緊急調査する機会が増加。規格書を一枚一枚点検する日々が続いている。情報量と頻度が膨大なため、紙での管理は限界にきている。業務を継続するには、DB化以外方法がないと考えられるようになっているのだ。
2.品質情報DB化の混乱
圧迫される品質保証業務の状況打破に向け、食品小売業やメーカーを中心に品質情報DBを構築する動きが活発だ。手間と時間をかけず正確な品質情報を整備することに向け、大きな一歩を踏み出した。しかし、この一歩を揺るがす事態が起きている。仕入先に求められているデータ提供方式が、得意先ごとにバラバラになりかねないのだ。従来のようにフォーマットがバラバラなのも問題ではあったが、データ提供方式が異なると仕入先側では個別にシステム対応せざるを得なくなる。仕入先側である某食品メーカーでは、自社システムと自動的にデータ連携させようと考えたが、「入力する方法はない」と言われて、泣く泣く同じ情報を手入力している。業界レベルで品質情報を整備せざるを得ない情勢にも関わらず、データ連携に関する視点が中途半端な状態になっている。会社間でデータ連携するための指針が全くないのだ。データを受け渡しする手順を早急に決めるべきである。
品質情報DB化の混乱の中で、ともすると忘れ去られている重要な視点がある。品質規格書はあくまでも規格。「こういうものを作ります」という宣誓書だ。食の安全を担保するのに不可欠な入口ではあるが、出口ではない。「規格に則って製造されています」ということを保証してはじめて、安全は担保されるのだ。製造現場での品質保証体制なくして、真の品質情報たりえない。製造ロットごとに実際に測定したデータを管理していなければ、情報に対する信頼性は低いのだ。
(取材協力:ブロード・システム・ソリューションズ)