プレスリリース
メディア 2006/10/06
日食IT版連載 成長へのモデルチェンジ
「食の安全を担保する情報管理」
「正しい表示」への仕組みづくり
生産管理で原料規格書の最新データを活用
モノづくりのあり方にも変化
アレルギー物質を含む食品の表示漏れや原産地表示の誤記載などを防ぐため、正しい表示の徹底に向けた仕組みづくりが着実に広がっている。原材料規格書(以下、規格書)の見直しやデータベース(DB)化を進めてきた企業の中には、規格書の最新データを生産管理システムに取り込む仕組みを構築するところも出てきた。この動きは、企業規模の大小を問わないものになってきている。食品安全に関する規制の強化と有力小売業の商品戦略が、食品メーカーのモノ作りのあり方にも変化をもたらしている。
1.正しい表示を徹底するための要件
2003年の2月から3月にかけ、アレルギー表示に関わる食品衛生法違反が相次いで報告された。マスコミで大きく報道されたこともあり、食の安全に対する社会の目は連日厳しさを増す。「食の安全」が語られる際、大手乳業メーカーの食中毒事故やBSE(牛海綿状脳症)の問題が持ち出されることが多いが、品質保証関係者の間では表示ミス防止への関心が断然高い。近年、規格書をはじめとする品質情報のDB化を行う食品企業が増えたが、実はアレルギー表示の義務化がその大きなきっかけという場合が多い。前述の食衛法違反事例の当時者となった企業でも、その後品質情報のDB化が急ピッチで進められた。
正しい表示を徹底するには、品質情報DBを二つの側面で効果的に運用していく必要がある。一つは、DBには常に正確な情報が登録されていること。もう一つが、DBの情報と実際に表示する情報とを一致させることだ。表示情報の作成をシステム化している企業でも、規格書を見ながら手入力で情報を登録・更新している例も多い。このような場合、入力漏れや転記ミスといったヒューマンエラーの問題が常につきまとう。
2.表示ミス防止へ向けた製造現場の取組み
規格書のDB化を図ってきた企業の中には、製造現場でもこのDBを活用しようという動きが出てきた。実際に表示する情報とDBに登録されている最新情報を、人手を介さずに常に一致させられる仕組みだ。ヒューマンエラーによる表示ミスの発生を防止するとともに、表示作成業務の効率化も期待されている。
具体的な仕組みとしては、原料入荷時に同原料の規格データを品質情報DBから取り込み、原料のロット番ごとに品質情報を把握できるようにするやり方が多い。製造段階では、生産管理システム上で製造ロットごとに投入原料のロット番号が関連付けられていることから、実際に表示する情報とDBに登録されている最新情報を一致させることができるのだ。惣菜や弁当など、製造段階で表示作成を行っている企業の一部では、すでにこのような取組みを始めている。
3.モノ作りのあり方に変化
製造ロットごとに品質情報DBの最新情報を関連付けようという取組みは、企業規模の大小に関わりなく行われ始めた。食品の安全性を巡る規制強化もさることながら、それ以上に小売業の商品戦略に対応した取組みとも言える。近年「合成添加物不使用」を表示した商品が続々登場しているが、食品メーカーではそれに相応しい体制を整備しなければならなくなったのだ。
食品工場では製造レシピをもとに生産を行うが、この情報はあくまでモノ作りの情報。「どの原材料をどう使う」というのが要素だ。合成添加物不使用の製品を作るには、それに対応した原材料を投入しなければならない。しかし、製造レシピを見ただけでは、その原料が合成添加物を含んでいるは分からないのが一般的だ。「この原料は合成添加物を含んでいない」ということが確認できなければ、生産を行えない。とはいえ、生産のたびに原料規格書を確認するような手間はかけられない。製造ロットごとに最新の品質情報を関連付けられる効率的な仕組みが、中堅・中小企業でも求められるようになってきたのだ。
欠品や過剰生産を防ぐための体制を必死で追求してきた製造現場。しかし、食品安全規制への対応とともに、得意先の商品戦略に適ったモノ作り体制が構築できなければ、気付かぬうちに撤退を余儀なくされる状況に追い込まれてしまう。
(取材協力:ブロード・システム・ソリューションズ)