プレスリリース
メディア 2006/08/04
日食IT版連載 成長へのモデルチェンジ
「食の安全を担保する情報管理」
ブラックボックス化された製造DB
時代の流れが旧来型モノづくりの発想転換を迫るレシピ一元化が食の安全とコスト削減のカギ握る
食品製造の際に不可欠な製造レシピ。原材料や製造上の特性もあり、その作成には現場の勘と経験が大きく影響している。その反面、それが製造レシピをブラックボックス化させ、製造現場の問題点を見えなくさせてしまっているのも事実だ。これまでは「とくかく作ることが第一」という旧来型のモノ作りの発想が、これを擁護してきた。しかし、「多品種小ロット生産」「廃棄ロス削減」「トレーサビリティ」という時代の流れは、この発想に転換を迫っている。流れに合わせ事業展開を行っている食品メーカーでは、食の安全と製造コスト削減のカギとして、レシピ情報の一元的管理に取組み始めた。
1.製造レシピを補完する「現場の勘と経験」
前回見たように、食品メーカーのレシピには大きく分けて二種類ある。商品開発部門などが作成する商品レシピと、製造部門などが作成する製造レシピだ。前者が一食分のレシピを管理しているのに対し、後者は一回の製造単位分(バッチ)のレシピを管理している。商品レシピに実際の製造数量分を乗じれば製造レシピになるかというと、そう単純ではない。例えば馬鈴薯を原料として使っている食品メーカーで1000分の原料が必要な場合、毎回同じ数だけの馬鈴薯を投入すればいいというわけではない。一つとして同じ大きさ・形状の馬鈴薯はないのだ。1000個で済む時もあれば、1100個必要な場合もある。製造する食品機械の性能によっても、必要な原材料数が異なる場合もある。その曖昧さを補完しているのが、現場の勘と経験なのだ。
2.ブラックボックス化する製造レシピ
製造レシピには文字通り、製造に必要な情報を盛り込まなければならない。投入する原材料はもちろん、工程(製造方法)や歩留、要員などだ。前述の通り、バッチ単位のレシピでなければ製造現場の実態に合わない事情がある。そのため製造レシピをバッチ単位で作成している食品メーカーがほとんどだ。標準原価も、バッチ単位で計算されたものが基本になる。
製造レシピの作成は、現場の班長やリーダーなどが担当する場合が多い。汎用的な表計算ソフトで作っていることがほとんどだ。商品開発部などから送られてきた商品レシピを転記またはコピーし、製造時に必要なバッチ単位の原材料数量などを追加入力していく。受注数を入力すると、自動的に原材料の所要量が算出されるよう式を組んでいることも多い。それをもとに現場に製造指示を出している。
製造レシピは現場の勘と経験に裏打ちされている反面、特定の担当者のみぞ知るブラックボックスとなっていることも多い。しかしこれは、「とにかく作ること第一」といった旧来型モノづくりの発想があればこそ、成立する話だ。食の安全や廃棄ロス削減への取組みが製造現場の大きな評価項目となる中、製造レシピをブラックボックスから解放することが、その突破口として認識されはじめている。
3.製造レシピ一元化が時代の流れに
「多品種小ロット生産」「廃棄ロス削減」「トレーサビリティ」という、時代の流れに合わせて事業展開を図っている食品企業を見たとき、ある共通点が浮かぶ。製造レシピを一元的に管理する仕組みに手をつけているのだ。情報共有ができるように製造レシピを一元的に管理することで、製造実績や廃棄ロスを踏まえたレシピの見直しや、原材料の無駄な発注を防ぐことを目指している。
製造現場も含めてトレーサビリティに取組んでいる食品企業では、製造レシピの一元化を図るとともに、商品レシピや原材料規格書、検査報告書とのデータベース連携を構築している模様だ。トレーサビリティシステムと呼ばれているものの中には、書類上や伝票上で遡及・追跡する形式のものが多いが、実際の製造で投入した原材料の検査結果まで連携させている例はまれだ。「規格に則って製造されています」ということを保証してはじめて、安全は担保される。製造現場まで含めた品質保証体制のあり方が具体化しはじめた。
(取材協力:ブロード・システム・ソリューションズ)