プレスリリース

メディア 2006/02/06

日食IT版連載 成長へのモデルチェンジ
「食の安全を担保する情報管理」

品質情報DB化の必要性

忘れられた二つの視点

残留農薬等ポジティブリスト制(PL制)への対応を巡り、再びトレーサビリティが話題だ。しかし、現実にはトレースしきれないという事態とともに、前提条件の不備が指摘されている。原材料の品質情報を紙で管理している場合が多いのだ。成分や規格を調べるのに膨大な手間がかかる。近年、品質情報のデータベース(DB)化が急速に進行。成果の一方で、業界レベルの課題も生じている。本連載では、大きな期待を担っている品質情報DBの課題と盲点を取り上げ、真に安全を担保しうるあり方について探っていく。

食の安全を巡る規制強化で、製品や原料の品質規格書を再点検する動きが活発だ。しかし、これらは紙で管理されている場合が多く、調査には膨大な時間がかかる。事態打開に向け、品質情報のデータベース(DB)を構築する企業が増加。しかし、ある混乱が起きている。仕入先に求めているデータ提供方式がバラバラなのだ。仕入先では個別にシステム対応せざるを得ない事態が発生。業界全体でのデータ連携に関する視点が中途半端な状態になっている。もう一つ忘れてはならない視点がある。品質規格書は「こういうものを作ります」という宣誓書。「こういうものです」という証明書ではない。製造現場での品質保証体制があればこそ、食の安全は担保されるのだ。

1.書類と実態の乖離

02年に発覚した鶏肉を巡る偽装表示や、その後03年に相次いだアレルギー表示違反の影響で、原材料情報を再点検する動きが一気に起きた。原材料に含まれるアレルギー物質や添加物などの情報は、原材料規格書と呼ばれる帳票で保管されていることが多く、小売業やメーカーは膨大な枚数の規格書を点検し続けた。紙での確認に手間取ったこともあり、その後、規格書をDB化する動きが相次ぐ。この動きが食品業界で珍しくなくなる中、ある声がささやかれ始めた。「規格書をDB化しても、規格書通りの原材料で製造されなければ、食の安全は担保されない」という声だ。書類と実態は、いつも同じとは限らない。一部の大手量販店は、この部分まで担保できる仕組みを要請し始めた。

2.鍵を握るコード一元化

レシピ登録の画面。製品や原材料には識別のための固有コードが振られている。

食品製造で最も基本となる情報はレシピ(配合表)だ。製品を作る際に必要な原材料の配合量や加工方法を定めている。一般的にレシピは商品開発部門で作成され、これを出発点に品質保証部門で原材料規格書、製造部門で製造マニュアルが作られる。規格書やマニュアルに記載する項目には、原材料名など既にレシピに記載されている情報も多い。しかし、各部門で再び転記・入力している場合がほとんどで、重複作業が発生している。転記ミスが起こる可能性もあるため、確認作業にも膨大な時間がかかる。勤務時間の5割をこの作業に費やしている例も珍しくない。
レシピや規格書、マニュアルでは、原材料を簡単に識別できるよう、各原材料に数桁の数字で表した番号(コード)を振っていることが多い。この番号も部門ごとにバラバラなのが実態だが、これを統一(一元化)できれば、再入力などの重複作業や転記ミスもなくなる。元になる情報だけ入力・更新すれば、その他はコードを媒介に自動的に更新されるからだ。原材料規格書と製造マニュアルで情報が異なるということはなくなり、「規格書通りの原材料で製造されなければ、食の安全は担保されない」という不安にも対処できる。このような取組みは、大手食品メーカーのみならず、中堅メーカーでも着手され始めた。

3.新旧コードの並行利用が重要

コードの一元化で全てがスッキリするかというと、そう単純ではない。新コードに一元化しても、製造現場には旧コードの付いた原材料在庫などが残っている場合がほとんどだ。作業者も旧コードでの作業に慣れており、新コードでの運用に一気に移行すると混乱が生じる。現場でのスムーズな運用を果たすには、当面は、新コードと旧コードを同時に扱えるシステムにしておくことが必要だ。
(取材協力:ブロード・システム・ソリューションズ)

連載一覧

  1. 品質情報DB化の必要性
  2. 品質情報DBの業界標準は可能か?
  3. ブラックボックス化された製造DB
  4. 「正しい表示」への仕組みづくり
  5. 大阪デリカ
  6. 製造現場を含めた管理の仕組み
  7. 安全と効率を両立
  8. 小ロット生産にどう挑む?